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クリスマスがつらいきみへ

 街はイルミネーションに彩られ、駅にはクリスマスツリーが飾り付けられ、クリスマスソングが流れています。ネットでも実際の店舗でもクリスマスセール・・・。

 この時期をうきうき楽しく感じている人もいるかと思いますが、一部の人にとってはとてもさびしく、ゆうううつで、悲しい気持ちになります。

 そう、孤独な人にとっては、クリスマスはその思いを増すだけの、一年で一番つらいイベントなのです。(クリぼっちというらしい)

 意識しないようにしたって、街に出てもテレビを観てもネットをやっても目にも耳にも飛び込んできてその話題から逃げられず・・・。

 

 そもそもクリスマスなんてキリスト教徒のものでキリスト教の信仰のない日本人がうかれるもんじゃない!だいたい本場欧米ではカップルでラブラブになるもんじゃなくて、静かに過ごすもんだ!と恨みから正論も吐きたくなるというもの。でも、そう主張してみても正論が届いてラブラブなリア充や商店や企業やマスコミがうかれるのもやめるわけでもなく、むなしい・・・。

 

 ラブラブなリア充や世間の常識に恨みや怒りをぶつけない形でクリスマスをとらえ直して、考え方を変えてみましょう。

 

 クリスマスはもちろん、キリスト教のイベントで欧米由来のものです。日本人は多神教あるいはアニミズム(あらゆるものに霊、魂があると考える)なので、他宗教のイベントも受け入れる柔軟性があるとよく言われます。

 私も基本的にはその意見に賛成なのですが、もう一つの要素があると思っています。それは、季節を強く感じるイベントだと受け入れられるのではないか、季節を強く意識するためのイベントを受け入れて楽しむ傾向があるんじゃないかということです。

 クリスマスはキリストの誕生日とされていますが、実際には冬至の影響があるんでしょうね。日本における冬至はゆず湯に入ったり、かぼちゃ食べたりはありますが、あまりお祭り要素がない。そこにクリスマスが入ってきた。

 雪のもみの木をかざったり白いひげのサンタさんや白いケーキ(今はいろいろあるけど、私の子どものころはケーキは白いイメージでした。)を食べたりは、寒い雪の冬をイメージするのにちょうどよかったのではないでしょうか。またイルミネーションも、冷たい澄んだ冬の空気だからこそ映えるものだと思います。夏のイベントではイルミネーションの気分にはならなさそう。

 

 同様に、ハロウィンも私はかぼちゃがオレンジ色だったことが重要だったと思っています。あれは紅葉(黄葉)の色をイメージさせます。10月31日はこれから木々が色づき山が街がオレンジ色になる季節。その象徴としてオレンジ色はぴったりきたのではないでしょうか。

 まだあまり受け入れられているとは言えないイースターは、卵とうさぎですからね。あまり日本人の季節感と合わない。

 

 というわけで、クリぼっちがつらいみなさま、クリスマスは冬を感じるイベントだと思ってみましょう。寒さ、澄んだ空気、乾燥、長い夜、早い日没に遅い夜明け、ほっとする温かい室内、温かい食べ物・飲み物、・・・確かに人体に快適な感覚だけではありませんが、それも季節のある国の宿命。そのような冬という季節を深く強く味わうことに意識を向けてみましょう。さびしくてもつらくても身体は機能し、自分は生きているんだと感じられるかもしれません。そして身体と自然に包まれていると感じられるかもしれません。

 

 

 ムーミンママは“うみうま”という美しい人(馬)に失恋したムーミンをこう慰めています。

 「うみうまと友だちになるなんて、できない相談だと思うわ。だけど、だからといって失望することはないのよ。きれいな鳥とか美しいけしきを見るのとおなじに、うみうまを見ることができたらそれで幸福だと思えばいいんじゃない。」

 

 恋した人を自然のようにみるのは確かに難しいでしょう。一方的に愛するのではなく、相手からも愛してほしい、受け入れてほしいんですからね。しかも自分だけを。

 でも、失恋の痛みを自然が癒してくれるということはあります。それは性質の違う愛なのでしょう。そんな愛は個人の間の愛よりも大きく感じることもあります。

 

 

 そうそう、日本で海外や他宗教のイベントが流行るかどうかは、季節感だけではない場合もあります。それは、もうかるかどうか。商業イベントになるかどうかですね。バレンタインデーなんかは、あまり季節感関係なさそうです。2月とチョコレートや告白はあまり季節の関連を感じさせないですねえ。でも、多くの場合、たくさんの人が商品を買ったりお祭り騒ぎに乗るのは、季節のお祭りのような雰囲気を持っているからだとは思います。それに商売人もうまく乗るんでしょうね。