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休校中、外出ひかえているきみへーすごし方アドバイスー

 新型コロナウィルス、COVID-19による休校から、1週間たちました。(学校によっては月曜日からではなかったところもありますが。)今の時点での私なりのメッセージです。

 

1.あなたの感じていることは、大切なものです

 

 休校と聞いた時どう思いましたか?

 今のクラスメートや先生と会えなくなることが残念で悲しい人もいることでしょう。高校・中学3年生や小学6年生は、卒業となってしまいますので、ことさらそう感じたかもしれません。

 学校が楽しくない人は、もしかしたら、休校はうれしいことだったかもしれませんね。

 

 今どう感じていますか?

 外出もひかえるよう言われ、習い事もお休みしているところも多く、つまらないと感じている人もいるでしょう。

 自分や家族が感染しないか、日本や世界の経済がどうなるか、勉強はどうなるのか、マスクはじめ品物が不足していること、などに不安や恐れを感じている人もいるかもしれません。

 

 どんな気持ちも、何を思っても、それがまちがっているとか、恥ずかしいとか、ありえないとかはありません。あなたがそう感じているという事実はすべて大切で尊重されるものです。他人に言えないふきんしんな気持ちも、自分がそう思ったという事実はみとめてよいのです。

 

 自分が感じていることを身近な人に話してみましょう。もし話した人に受け止めてもらえなかったら、ざんねんなことですがほかに話せる人をさがしましょう。

 

 でもネット、SNSで発信するのはしんちょうに。あなたが感じていることが、ネットではそれが現実的な事実とかんちがいされて、デマとなって広がることがあります。また、知らない人に見られると、思いやりのないひどいことを言われたり、犯罪にまきこまれることもありえます。

 

 

2.不安や恐怖を乗りこえるには、情報収集を上手にしましょう

 

 不安や怖さを感じている人もいるでしょう。今回は新しいウィルスという、はっきり正体がわからないうえに目に見えないものなので、不安や恐怖は当然です。未知のものほど怖いのです

 しかし、災いを成長のチャンスに変えられるかもしれません。テレビやネットには、新型ウィルスについてのデマや偏見がたくさんあります。この機会に、自分で情報を収集し自分で考える力をつけてみましょう

 

 デマや偏見、かたよった情報も多い状況では、情報収集にはコツがあります

 

 まず、今回の新型ウィルスのみにしぼらず、様々なウィルスや病気に広げて調べてみましょう。そうするとウィルスそのものに詳しくなり、今回のウィルスについてもあまりに常識外れな話はデマとわかります。過剰な心配も減ります。たとえば、強い空気感染力をもつウィルスは細菌を合わせても3種類しかありません。インフルエンザやコロナウィルスの空気感染は時おり起こりますがそれは密室で起こるそうです。そうすると、今回のウィルスが空気感染する可能性は低いし、換気すれば予防できるとわかります。どんどん空気感染するというデマがあっても、怖れる必要性は低いですよね。

 

 次に、医学的、科学的な情報だけではなく、歴史や法律、そして哲学や文学についても調べてみましょう。たとえば、ウィルスに人類がどう対応し打ち勝つのかは、歴史上の事実やリアルに描かれた小説や映画も参考になるし勇気ももらえます。行動の指針にもなります。近代以降は、ウィルスよりもデマや他国民・他民族への憎しみ、疑いのほうが、大勢の人が死んだり傷つく原因になっていることも知っておいてください。病気よりも、差別のほうが人を殺す恐ろしいものだというのは、歴史上の事実です

 

 最後に、発信者の態度に注目してみてください。感情的になって強い口調で言う人、過激な内容の意見はうそである可能性が高いです。これはウィルスの情報だけでなく、すべての情報について言えます。理屈では正しいことを言っているとしても、その言い方が怒りや憎しみに満ちたものであれば、信用しないほうがいいです。なぜなら、そういう人は事実の発信という言い訳で、自分の感情を出しているだけだからです。また、自分で自分の意見の正しさに本当は自信がないので、ごまかそうと感情的になるのです。さらに、批判を怖れて相手が疑問をぶつけてきたり反論しないよう強く言うのです。お金もうけのために、にせ情報を出す人もいます。そういう人も感情的になって自分を守ろうとします。

 

3.外出できないときのすごし方

 

 今は感染の爆発をおさえ医療崩壊を起こさないために、外出をひかえなくてはいけないと言われています。

 やることがなくてたいくつですか?むしろゲームやYoutubeを思う存分楽しんでいるかもしれませんね。勉強している人もいるでしょうし、読書している人もいるでしょう。家族とゆっくりお話しする貴重な時間かもしれません。でも、同じことをくりかえしていると、たいくつもあるしイライラもしてきます。刺激がないと欲しくなる、刺激が続くとゆったりしたい、のが人間のくせなのです。それができないとイライラや落ちこみや不安など、感情も不安定になるのです。

 

 外出ひかえるというのは、ウィルス相手の場合、 人が大勢いて密室になっている場所をさければよいのです。家から、部屋から、出てはいけないというわけではないのです。

 

 ですので、ぜひ散歩しましょう!一人か少人数で、近所を歩くのです。

 

 そのときのコツですが、ただ歩くのではなく、こころを外に開いて歩くようにするとよいです。こころを外に開くとは、感じるということです。それも気持ちや感情を感じるというのではなく、五感(見る、聞く、かぐ、味わう、肌で感じる)で感じるのです。怒りやかなしみといった感情を感じているままだど、こころは内側にこもったままになりますよね。そういう感情は大事ですが、とらわれると感覚を忘れがちになります。というか、いつもわれわれはけっこう感覚をおろそかにしています。今この瞬間、五感で感じていることを意識していますか?たとえば、今、呼吸でおなかやむねが動いているの感じていますか? ね、感覚って無視されてるでしょう。

 

 そこで、散歩するときに、見るもの、聞こえてくるもの、ただようにおい、風や気温、などを感じるようにしてください。いつも登校で通っている近所も、新たな発見があるかもしれません。「青空きれい。」とか「あ、こんなところに木あったのか。」とか「おお、桜咲き始めている。」とか「あ、川のにおいする。」とか「あ~今日は日ざしがあったかいなあ。」「あ、風冷たい。」などなど。ささいな「あ!」とか「お!」とか「あれ!」という感じを大切に。自分の体についても、そういう気づきを感じてみてください。

 

 散歩が一番よいのは、競争やタイムを気にせず、ゆっくりと感じることができるからです。感覚はゆっくりと意識を集中したときに、よりはっきりと感じられます。

 だから、アスリートタイプは要注意。散歩のつもりが、タイムや距離や、何歩という目標を設定しがちです。スポーツは実は感覚を無視して行うものです。だから痛くても記録や順位のために無理してますよね。

 

 ジョギングやサイクリングは、どうしてもタイムや距離を考えてがんばりがち。でも、五感を意識しつつゆっくり行うなら、ジョギングやサイクリングもよいですね。

 

4.小松左京『復活の日』、カミュ『ペスト』より

 

 最後に、私が読んだことのある伝染病と人類の闘いを描いた小説の言葉を紹介します。

 

 小松左京『復活の日』では、おそろしい新型ウィルスで南極にいた人を除いて人類が絶滅してしまいます。

それでも南極に生き残った人々は、懸命に人類の生き残りと文明の復活に向けて動きます。その決意の言葉です。

 「復活されるべき世界は、大災厄以前と同様な世界であってはなるまい。とりわけ“ねたみの神”“憎しみと復讐の神”を復活させてはならないだろう。(中略)一番最初の責任はわれわれにあるのである。」

 

 カミュの小説『ペスト』は、ある都市でのペストの発生から隔離封鎖、その終結までを描いた小説です。政治家や専門家が病気の正体をなかなか認めなかったり、生活必需品が値上がりしたり、一部の人が封鎖を突破しようとしたり、今の状況とよく似た社会が描かれます。それでもその理不尽な世界で人々は耐えぬきます。

「天災のさなかで教えられること、すなわち人間のなかには軽蔑すべきものよりも賛美すべきもののほうが多くあることを、ただそうであるというためだけに。」