開室した理由 ー公的相談機関の限界と有料相談室の意義ー

「しらかば心理相談室」が開室して1年が経ちました。無事に1年間やってこれたのは、クライエントのみなさまをはじめ、多くの支えてくださる方のおかげと感謝いたします。

 

 さて、1年というタイミングで、あらためて、開室した理由と想いを自己紹介の意味もこめて書いてみたいと思います。

 

 臨床心理士となってからこれまで、公立小・中学校のスクールカウンセラー(まだ続けています)、公的相談機関、民間の開業相談室、で勤務してきました。これらはすべて雇われる形です。給料ないし面接料の何%かを受け取るという形でした。

 当然、相談室自体の運営や営業、事務処理などは、雇い主にお任せしているわけです。その点では楽でした。

 しかし、これも当然ですが、雇われる立場ではやりたいことを自由にやるわけにはいきません。それは面接内容や方法、運営方法、部屋や家具や箱庭アイテムについてもです。

 これまでいくつかの職場を経験するなかで感じた不自由さを、自分のためにも、利用するクライエントさんのためにも、できる範囲で解消する相談室を作りたいと思いました。当時指導を受けていた福島哲夫先生からも、実力のお墨付きと開業のお勧めをいただいたところで、開業を決意しました。

 

 ここで、これまで感じていた不自由さと当相談室で解消した点を挙げます。

 

1.平日はお仕事している人が相談に来れない

この問題はスクールカウンセラー始め、公的機関で顕著です。たいてい平日の開室で17時くらいで終了してしまいます。男女共同参画社会で、女性、母親もお仕事をしていることが増えているなかで、平日のこの時間帯では来談できない。有給とるにも限界があります。子どものことを心配しつつ、スクールカウンセラーや教育相談に定期的に通うことができない例がたくさんありました。

そこで、土曜日の開室と、平日はお勤めの後にも来談できるよう、21時まで(20時最終受付)という時間帯を設定しました。(こう考えてみると、有給休暇をだれでも月に2回程度とるのが普通になると、平日に月2回頻度で公的な相談に来れるんですけどねえ。)

  

2.スクールカウンセリングでは児童・生徒のセラピーをする時間がない 

スクールカウンセリングではもちろん子どもたちの相談にのっています。しかしその対応に限界があります。まず一番大きいのは、児童・生徒と会えるのは、小学校では、20分休み、昼休み、放課後しかないということです。中学高校にいたっては20分休みはありませんので、2枠のみです。放課後は部活に参加したい場合もあるので、昼休みしか来談できないこともあります。しかも週1回から2週に1回です。また、場所も学校内なので、気にする人は気にしてしまいますし、本格的なセラピーはできません。定期的にしっかりと子どもたちのセラピーを行うには、より広い時間枠と安心できる場所が必要でした。(こう考えてみると、学校で子どもたちが、1時間程度授業ではなくてなんでもしていい時間があればいいなあと思います。)

また、公的機関での児童・生徒の対応は、年齢制限があるということです。小学校のスクールカウンセラーは、相談者が中学に行くと相談はできません。相談機関も中学卒業までとか18歳までとか決まっているんですね。例えば小学校で不登校の児童が中学でどうなるか、フォローアップもしたいし、成人あるいは社会人になって、不登校ではない悩みが出たときも、また支援したいと思いました。これは民間の開業でないとできないんですね。

 

3.合気道セラピー(身体を動かすセラピー)ができない

合気道を心理療法に応用することが私のライフワークとなっています。しかし、雇われている立場では、物理的に二人の人間が身体を動かず部屋が確保できませんでした。心理療法の内容は自由にやらせてもらった(合気道セラピーやってもよいと言われた)のですが、物理的な制限はどうしようもありません。それを解消し、合気道とセラピーの研究、実践をできる自分の相談室がどうしても欲しかったのです。

 

4.ブログ等の発信が難しい

心理療法の実力がついたら、自分のホームページとブログで、心理のこと、合気道のこと、文化社会的なこと、等を発信したいという気持ちがありました。自分のなかの倫理観というか美意識で、理屈だけの正論を言う、というのは嫌でした。実力、少なくとも経験をある程度つんで、口先だけでなく実体験によった腹の底からの意見や感想を言えるようになったら、HPやブログ発信を考えていました。

これも、特に公的な立場からでは不可能です。もちろん、個人としてHPやブログを立ち上げることはできましたし、以前から周囲から勧められる声も多くありましたが、やはり自分の経験をつむのを待っていたので、開業とタイミングが合った感じです。

 

 

というわけで、自己紹介かつ宣伝もかねて言うと、時間的に公的な機関や病院で相談やカウンセリングを受けることができない方、多くの機関で行われている対話によるセラピーで効果が出なかった方、ブログをお読みいただいて関心を持たれた方は、ぜひ一度ご連絡ください。

 

スクールカウンセリングや公的な相談機関では無料でカウンセリングを受けることができます。当相談室はじめ、個人開業の相談室では安くはない料金が発生してしまいます。それは、対応時間帯が広い、より専門的でセラピストの個性や理念を活かしたセラピーができる、などの、より広く深いニーズに金銭的ご負担をいただくということでご理解をいただきたいと存じます。(あとは、開業できるカウンセラーは一定以上の経験と実力があるので、信頼感もよりあるとお考えください。)

 

同業者や研究者の方もぜひご連絡ください。同じく心理療法を仕事としている方、ほかの分野の専門家の方、いろいろと意見交換をしたいと思っています。

 

2年目、3年目に向けて、これからもよろしくお願いいたします。