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発達障害の子はなぜ同世代より年上と年下とうまくいくのか

 広く知られていますが、発達障害の子どもは、同世代との雑談や遊びのコミュニケーションは苦手です。柔軟に臨機応変にコミュニケーションを変化させることが苦手、自分なりのこだわった趣味がありマジョリティが興味を持つ話題には興味を持てず理解できない、話のテンポやリズムも定型発達の子たちとずれてしまい、お互いにストレスを感じてしまう、などの点からでしょう。

 一方、年上のカウンセラーや教師、家庭教師、ボランティアスタッフなどとはうまくいくことがあります。

 同時に、年下との関係も大丈夫だったりします。小さい子の面倒をみたり、いっしょに遊ぶときには気が合ったりします。

年上のお兄さんお姉さんは、彼らのペースを尊重してくれるので、付き合いやすい、というのはお分かりかと思います。しかし、年下の子はむしろマイペースだったり、わがままだったりします。発達障害の子にとって、むしろ苦手分野ではないでしょうか。

 確かに、小さい子が苦手という場合も多いです。しかし、上記したように、同世代より年下と遊んでいるケースもけっこうあります。その場合、小さい子の自分勝手さや臨機応変さについては、どのようにとらえているのでしょうか?

 

 発達障害とは、発達の偏り、つまり、大人びている面もあれば、同世代と同等な面もあれば、幼い面もある。年上とは発達が先行している要素で付き合い、年下とは幼い面で付き合う、ということもあるでしょう。同世代と比べ理屈っぽい点などは、年上とやり取りするほうが向いているでしょうし、趣味が幼い面などは、年下の子と遊ぶときに向いている、ということでしょう。

 

 もう一つの要素として、年上、年下と付き合うときは言葉使いや役割が決まっているという点もあると、私は感じています。

 例えば、人と話すとき敬語を使うべきかどうか?近い世代だと、その判断だけで、発達障害の子は疲れてしまうのです。しかし、年上なら、迷うことなく敬語、丁寧語でよい。日常の雑談で同世代とわいわいやるのは、どういう言葉使いをしたらよいのか、どの程度なれなれしくしてよいのか、わからないのです。年上であれば、敬語丁寧語で、あんまりなれなれしくしてはいけない、と明確なので、その点を悩まなくてよいのです。

 年下も、面倒をみなくてはならないという位置づけがわかりやすい。また小さい子が自分勝手であるのは仕方ないという認識があると、許せるようです。

 つまり、年上、年下とのコミュニケーションでは、役割や形式が決まっているので、楽なのではないでしょうか。

 これは、仕事や学校にも応用できる考え方です。役割を明確にし、余計な雑談や臨機応変さを求めなければ、発達障害の人は、さほどストレスなく役割をこなせるかもしれません。

 逆に言うと、小学校や中学校のクラスでは、勉強や学級活動、係活動だけでなく、休み時間もほぼ同世代が集められそこでコミュニケーションをとらなくてはなりません。決められた役割をこなすだけでは、立ちいかないのです。授業は大丈夫だけど、休み時間や給食の時間がつらいという発達障害の子が多いです。

 

 クラスや同じ学年の友だちとうまくいっていない発達障害の子どもも、社会に出れば役割をしっかりこなせれば、文句は言われません。雑談や楽しい会話は、気の合う人、同じ趣味の人、年上年下の人と、やっていければ、充実した人生となっていきます。