· 

HSPを合気道セラピーから考察する

 近年芸能人の発言も多くなったこともあってか、HSPあるいはHSCが話題になっています。Highly Sensitive Person(Child)の略で、刺激に敏感で繊細、共感力が高い人(子ども)たちのことですね。

 

 HSPの方の繊細さや共感性の高さはむしろ長所でしょう。すばらしい特性です。提唱者のアーロン博士も、その著書で問題点よりも長所を多く記述しています。

 しかし、一方で感覚が敏感過ぎて生きにくかったり、相手の気持ちや空気が読めるので気疲れしやすかったり、共感して他人の苦しみや悲しみで自分も心を乱したりと、繊細すぎて傷つきやすいという面もあるようです。

 

 これまでHSPについては、その専門家が詳しく述べていると思うので、私は合気道セラピーからHSPを考察してみようと思います。

 

 合気道においても、繊細、敏感であること、共感性が高いことは、大切です。サトルボディ、つまりもの(身体)とこころの関係や微細な感覚や気について敏感であることは、合気道でもセラピーでも大切です。そこに気付かないことで、心身の不調にいたっている人もいます。自分の気や身体感覚に敏感なだけではなく、相手の気や動きに敏感出ることも大切です。自分の気と相手の気を合わせることで、お互いにとって心地よい技が成立します。

 しかしHSPの人は、調和と同時に大切である“軸”がぶれてしまう傾向があり、それが生きにくさにつながっていくのではないでしょうか。

 相手に合わせて導こうとするとき、軸がしっかりし下半身が安定していないと、相手の動きに流され、自分は崩れ、相手の流れに従うようになってしまいます。合気道で一方の力が強すぎ、もう一方の軸が不安定な場合は、その力に圧倒されてしまうだけになります。

 HSPの人がつらいときは、敏感すぎ繊細すぎることで感覚や感情の力が圧倒的となり、その力に自分のこころのほかの部分、あるいは自分自身が、態勢を崩し引きずられているようになっているのではないでしょうか。それは一見相手や環境に影響され引きずられているように思われます。確かにその面もありますが、もう一方で、その過敏すぎて乱れた自分自身に引きずられているとも言えます。

 

 発達障害と同様に、HSPにも周囲の理解と環境調整は必要でしょう。同時に、HSPの方は、ぶれない軸を育てるというのも有効な対策ではないかと思います。

 

 HSPの方が向いている職業として、アーロン博士はカウンセラーを挙げていました。確かに、クライエントさんの些細な状態に気づき共感する力は、カウンセラー向きだと思います。しかし、あまりに共感しすぎて相手や自分の感情・感覚に引きずられてはカウンセリングはできません。共感しつつどこか客観的で冷静で、理論や技法や倫理を忘れないことが我々には必要です。

 

 同様に、HSPで生きにくさを感じたりうつや適応障害といった悩みを抱えている方の場合も、自分のゆるがない軸を育てることが必要なのではないでしょうか。

 

 相手と調和するために、相手と自分の気や感覚を敏感に感じ取る、という点は合気道でなくても、対人コミュニケーションや、仕事、芸術やスポーツなどの趣味、危機管理、などなど、いろんなメリットがあると思います。生きがいや自己実現にとっても、とても貴重な能力です。その点はもともと能力があると思いますので、重要なのは激しく動き回っていてもぶれない軸を育てることでしょう。攻撃されてよけたり後退したり、相手に合わせたりこちらに合わせてもらったりしても、身体は崩れない、つまり軸がしっかり立っているように身体で経験し、それが行動や思考・感情に影響していくことで、心理的な問題あるいは生活上の問題も解消していく、というのが、HSP向けに合気道セラピーが利用できることのように考えています。

 

参考文献

 エレイン・N・アーロン(著) 明橋大二(訳) ひといちば敏感な子 1万年堂出版