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マスクの下でほほえみを

 新型コロナウイルスが日本で初めて感染が出てからほぼ1年、収まるどころか二度目の緊急事態宣言で大変な日々が続きますね。マスクも消毒も、もううんざりという気持ちがあります。

 1年前に(セラピストが)マスクをしたまま心理療法を行うというのは、想像もつきませんでした。

 しかし、やってみると、意外と影響ないと感じています。私だけの一方的な気持ちではなくクライエントさんからもマスクへの不満ややりにくさというのはあまり聞きません。効果にもさほど影響していないと思います。

 これは、人間のこころや魂は、マスクなどではさほど影響されないということなのではないでしょうか。

 時々ネットなどで、コロナの症状よりも、成長期の子どもがマスクをしたまま育つことのほうが怖い、とか、悪影響がある、という人がいます。確かにその面はあるのでしょう。特に乳幼児期への影響は大きいかもしれません。しかし、小学生以上でいうと、悩みや問題を抱える子どもたちと日々接している私の実感では、その意見は子ども(あるいは人間)のこころや魂をなめている、もしくは悲観的に過ぎると思うのです。

 実際、この1年で、とても成長し、しっかりしてきた子どもたちを見ています。マスクがそんなに悪影響なら、その子たちはどうしてこの1年で成長し、癒され、やさしさや強さを得たのでしょう?それは個人差でしょうか?そうでしょう。つまり、その子が成長し癒され、立ち直り、美しい魂を見せてくれるのは、その子の力であり、また運命が今そのとき、成長させたのでしょう。人が変わる‘そのとき’の力には、マスクの影響など問題ないのです。特に、虐待を受けている子どもが今年に入ってやさしく力強く変化し人との関係を築いていく姿を見ていると、マスクをしていると人の豊かな交流が妨げられるなどとはとうてい思えません。

 

 今は当相談室でのセラピーでも、マスク着用のまま行っています。合気道セラピーも瞑想もマスクをしたままです。それでも、上記したように、そんなに悪影響は感じません。合気道セラピーをすると、身体がすっきりして暖かくなり、こころもゆったりします。その感覚は、マスクをしてもさほど変わりません。

 瞑想もマスクをして行いますが、呼吸に意識を集中し、浮かぶ考えや感覚をそのままにしておくと、次第にほほえみが出てきます。私がこれを始めて体験したのは、数年前、合気道の道場で、統一の印を組んでいたときでした。統一の印は、指を組んで印を作る以外はまあほぼ瞑想呼吸法です。この修行をして数年、口角が自然に上がるようになってきました。無理にほほえもう、というのではなく、ほほえむことが自然に感じてきました。合気道でこの感覚を得てから、セラピーの場での瞑想呼吸法でも、口角が意図しなくても上がってくるようになりました。また、自然に上がってこないときでも、口角が上がるよう求めている、ほほえむことがふさわしい、と、わざとではなく思えるのです。

 

 成長する子どもやセラピーでの心地よさを見ると、マスクが人間のこころや魂が成長し癒される力を妨げることはない、となんだか安心が持てます。

 まだ未知の部分が多いウイルスが広がってしまった今、マスクは不可欠でしょう。ぜひともマスクはしっかりしましょう。それでも、人はタフに美しく成長し変化していく。マスクの下ではほほえむことができるのです。