コロナ禍で2周年を迎えて;人のこころの強さと豊かさ

 おかげさまをもちまして、2021年4月に開室2周年を迎えることができました。クライエントさんを始め、これまで支えてくださったみなさまのおかげです。ブログという場ではありますが、感謝いたします。

 

 さて、当相談室の2年目は、コロナ禍とともにあった1年間でした。最初の緊急事態宣言は1周年を迎えて1週間後のことでした。私やクライエントさんが感染する不安ももちろんありましたし、クライエントさんの来談ができなくなってしまい、新規のお申込みも無くなったりして、まだ軌道に乗っていない当相談室がつぶれてしまうのではないかということも不安でした。

 実際には、今の時点で自分もクライエントさんも感染した方はおらず、新規のお申込みも増えています。(本当に感謝いたします!)言ってみれば杞憂、心配しすぎであったのですが、やはり大きなストレスにはなりました。第4波かという今も、その不安はあります。

 

 しかし、そのようなつらく不安な中でも、闇夜の星、泥中の蓮華、のように、いつくもの素晴らしい出来事や発見もありました。

 

 まずオンラインカウンセリングを導入したこと。子育てカウンセリング・リソースポートの半田一郎先生からインタビュー動画のお誘いをいただいたことをきっかけに、Zoomを知り、導入しました。カウンセリングは言葉だけで行うわけではありません。身体や雰囲気、場の力、というものもとても大切です。そのため最初はオンラインには疑問もありましたが、やってみると案外と魅力的でした。瞑想や呼吸法、パペットを使った遊戯療法的なやりとりもなんとか可能で、これは楽しい発見でした。(それでも、やはり直接お会いするほうがよりよいとは思いますので、現在は遠方の方やご事情のある方以外はご来談いただいています。)

 

 第二に、マスクをしている分、表情にとらわれずクライエントさんの話の意味と内的なイメージを大切にするようになったことです。口元が見えない分、目や声質、話し方に敏感になったのと同時に、そこから生じるイメージ、クライエントさんや自分自身の身体や内的なイメージ全体に敏感になっているような感覚がありました。

 これは一見矛盾します。クライエントさんの目や声質といった外部に気を取られすぎると、それに執着したり、敏感になりすぎて惑わされたりすることがあります。逆に、自分の内的なイメージに敏感になると、それにとらわれて外的な重要事を見落としたり、心理療法が心理士(師)の自己満足にすぎなくなったりします。

 しかし、今回私が感じたのは、顔半分が見えないクライエントさんのお話を聞きとろうと敏感になるうち、自分の身体や内的なイメージも活性化するというか、より敏感に感じ取れるように思えたのです。これは今後も検討するテーマかと思います。

 

 最後に、これが一番大きくまた重要なことであり、感動的なことだったのですが、クライエントさんのこころの回復力のすばらしさを強く実感したということです。つまり、人のこころは、成長するとき、目覚めるとき、立ち上がるとき、癒されるとき、まさにそのときには、新型コロナウイルスの不安や社会の動揺に影響されないということです。

 多くの評論家や専門家がマスコミやネット上で、今回の不安や動揺の悪影響について語っています。確かに、とくに女性の自殺者が増えていることから、人びとのこころに悪影響が出ていることも間違いないでしょう。しかし、この一年間で、多くのクライエントさんが、悩みの解決や症状の緩和を成し、自分らしさを回復し、活き活きとした人生を取り戻していきました。新型コロナウイルスの人のこころへの悪影響が必須のものであるなら、この一年はクライエントさんが悪化するばかりなのではないでしょうか。しかしそんなことはなく、実際には、私の体感では、今年はむしろクライエントさんの素晴らしい回復力を感じさせてくれる事例が多くありました。人間のこころの回復力に驚かされ感動させられることが多い一年間でした。

 

 社会的な不安の中でも、人は成長し変化できる。その柔軟性としなやかな強さを、もっともっと信じていける!と、コロナ禍だからこそ、強く感じられたように思います。マスクをしているからダメ、ソーシャルディスタンスしているからダメ、経済活動が鈍っているからダメ、というのではなく、そんな中でも人はしなやかに豊かに生きていける、と人のこころの強さをさらに感じさせられました。

 

 心理療法家は治療やワクチン・治療法の開発には貢献できません(もちろん、それは医療者、ウイルス学者、製薬会社のみなさんに期待と感謝を寄せたい)。世界を覆う脅威に、われわれはあまりにも無力であるとも感じています。また経済的な苦しさを、心理療法ではなんともできません。それは心理療法家ではない人たち(まあ、政治家でしょうねえ。)の活躍を期待しつつ、私は自分の城である「しらかば心理相談室」を守り、そこにいらっしゃるクライエントさんに貢献できるささやかなことをしていきたいと思います。

 

 3年目もよろしくお願い申し上げます。